ルールに従って欲しい
精神療法の開拓者であるM.バリントは、予定外の面接をねだり取ろうとした患者に対して、次のようにクールに対応したそうです(中井久夫訳「治療論としての退行」金剛出版)。
実際に私はどうしようとしたか。まず患者の困惑を承認し、受容した。そうすれば私が患者の側に立っていることを患者が感じるだろう、と私は考えた。それから私はこう言った。「どうも私がしてあげられる番外面接一回には今君が期待している、いや君はたぶん期待ではなくて必要としているのであろうが、とにかく、そういうものを君にあげるほどの力がある気はしないのだよ。更にね、それを私が承諾すると、君はちっぽけで弱く、君の分析者の私が大きく力のある人間ということになりそうで、それは良いこととは思えないね。まあそういった理由を全部ひっくるめて、結局君の求めに応じないことにするよ。」
私の依頼者に対する基本的要請は「業務時間内に・事務所に・電話してください」ということです。業務時間以外の打ち合わせを求められても原則として応じていません(ただし依頼者の方の特殊な事情があれば柔軟に対処することはあり得ます)依頼者の中には、自分の問題で頭が一杯になって他者の存在が見えなくなっている方がいます。事務所の運営ルールを最初に判っていただけないと、1人のために事務所の業務が乱されます。他者に対する配慮こそ、法律問題を解決する第1歩だと思うのです。そうは言っても、深夜や早朝に対応せざるを得ない場合があることは私も認めます。通常の業務時間内の面談や相談では手遅れの場合があります。自分から依頼者の方に出向くこともあります。放置していたら自殺する雰囲気を感じた依頼者の方には自分から携帯電話の番号を教えたりもします。かような例外はありますが、かかる原則と例外の区別も自分がつけます。指示(ルール)に従わない方の依頼をお受けすることは出来ません。