5者のコラム 「医者」Vol.47

公的相談と事務所相談

消化管(口から肛門まで)には内部という側面と外部という側面があります。人体の内側にありますが物理的手段で外と繋げることが出来ます。消化管は外部性を有するため多少不潔であっても構わないそうです。食べたものは消化液で無害化され分解されて吸収されます。飢餓を免れるためには多少の不潔さには目をつむらざるを得ない。人体内部に他生物のタンパク質がそのまま入り込んできたら免疫反応が生じて大変なことになります。タンパク質は食物の遺伝情報を抹消するためアミノ酸レベルにまで分解されなければなりません。アルコール等の毒素は肝臓で無害化されなければならない。取り込む段階の寛大さと吸収する段階の厳格さが生命を維持しているのです。
 弁護士が行う法律相談には個々の事務所で行う相談と公的な場所(市役所や弁護士会法律相談センター等)で行う相談があります。私は両者は性質が違うと感じています。市役所や法律相談センターは口にあたります。毒性の高いモノでない限り、なるべく口に入れるべきです。食べたものは多くの場合に消化液で無害化されます。飢餓を免れるためには多少のことには目をつむるべきです。市民との接点を広く確保することは市民に対する奉仕活動であるのみならず、弁護士にとっても業務基盤拡大のチャンスです。可能な限り継続の方向で話を繋ぎ、多くの市民に弁護士との接点を持ってもらうべきだと感じます。これに対し事務所の相談は胃腸や肝臓にあたります。事務所の業務に他者の人生がそのままの状態で入ってきたら免疫反応が生じて大変なことになります。正義性と要件事実という法的フィルターを通して、小さい分子にまでバラバラに分解して吸収すべきです。毒素が含まれている場合には肝臓(早い段階)で無害化しなければなりません。取り込む段階の寛大さと吸収する段階の厳格さ。この行動様式が21世紀の弁護士業務を支えていくと感じられます。

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