久留米版徒然草 Vol.311

変化の理

蟻の如くに集まりて東西に急ぎ南北に走わしる人、高きあり賤しきあり。老いたるあり若きあり。行く所あり帰る家あり。夕に寝て朝に起く。いとなむ所何事ぞや。生を貪り利を求めて止む時なし。身を養ひて何事をか待つ。期する処たゞ老と死とにあり。その来たる事速やかにして念々の間に止らず。これを待つ間何の楽しびかあらん。惑へる者はこれを恐れず。名利に溺れて先途の近き事を顧みねばなり。愚なる人は、また、これを悲しぶ。常住ならんことを思ひて変化の理を知らねばなり。

蟻のように群れをなし、西へ、東へ猛スピードで走る人がいる。南へ、北へ超特急で動く。社会的身分が高い人もいるし貧乏人もいる。老人もいるし小僧もいる。出勤する場所があって、帰る家もある。夜に眠くなり、朝に目覚める。この人達は何をしているのだろうか?長生きを欲しがり、利益を求めて止まらない。養生をしながら「何かいいことないか?」と呟きながら果報を待つ。とどの詰まりは老いぼれて死ぬだけだ。死ぬ瞬間はあっという間で思いの刹那が留まることもない。老いぼれて死ぬのを待っている間に何か楽しいことでもあるのだろうか?迷える者は老いぼれて死ぬのを恐がらない。名前を売る為や金儲けに溺れ命の終点が近いことを知らないのだ。それでいて愚者は死ぬのを悲しむ。「この世は何も変わらない」と勘違いし「変化の理」を知らないからだ。(第74段)