久留米版徒然草 Vol.305

リスクは他人事ではない

山田昌弘「単身リスク」(朝日新書)は示唆に富む。少し要約。
 昔、人生は親の身分や職業などで規定されてきた。子は親の生活スタイルを模倣していた。しかし現代社会で模倣の対象は存在しない。自由化の時代は個人化の時代。昔は人生が上手くいかないと親のせいに出来た。しかし自由化の時代は自分の選択。結果を他人のせいにはできない。家族はもはやリスクを守る場ではなくリスクを生む場となっている(児童虐待・家庭内パワハラ・介護等)。子を産むこともリスク化している(少子化の原因)。キャバクラが貧困女性のセーフティネットになっている(日本独自)。ホームレスは男性が多い。親ガチャという言葉の一般化は日本社会が若者への支援策を怠ってきたことのツケ(闇バイトの遠因)。大学の奨学金制度の貧困化も酷い。
 卒婚なる言葉が普通になった。熟年期に「自分探し」(自分は何者か・自分はこれからどこへ向かうのか)を求められている。第2次思春期とも言える。先人はいない・前例もない・ロールモデルもない。高齢者を襲う様々なリスクを意識して生きてゆく必要性がある(寿命の長さ・家族との関係性・社会とのかかわり)。生き甲斐のリスク(何もしないで生きるには老後が長すぎる)。人生の後半戦ではこれまでの生き方や価値観をいちどリセットする必要がある。リスクは他人事ではない。自分の心のなかでシミュレーションし、そのときどうするかを考えておくこと。学び直しの習慣を身に着けておく。これまでの半生を「過去生」とし区切りをつける。「万人に共通するテンプレート」など存在しない。人は1人で生まれ1人で死ぬ。決めるのは単身者としての自分だ。

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