歴史散歩 Vol.8
歴史コラム(古地図の楽しみ)
歴史散歩の必須アイテムが古地図です。私は「歴史に興味を持ったから古地図を収集した」のではありません。自宅を購入する際に「候補地の過去を確認したい」と思って久留米の古地図を入手したのが出発点です。が入手した古地図は私の久留米に対する認識を劇的に変えてくれました。私の中に突如として古地図に対する興味が沸き上がり、これが郷土史への関心に移ったのです。
古地図は古い時代の人間の具体的な生き様を教えてくれます。過去の膨大な情報が一枚の古地図に盛り込まれているのです。古地図を頭に入れて街を歩くと、見慣れた街並みが全く別の様相を見せるときがあります。例えば現在道路とされているところは、過去には川であったり、民家の密集地であったり、田んぼであったりします。かっての繁華街が今は寂れて荒れ果てていたり、かっての原野が華やかな街の中心になっていたりします。そんな中で、特に嬉しさを感じるのは、古地図で確認できる古い建物を現地で現実に見つけることが出来たときです。古い友達に出会ったときのような何とも言えない懐かしさがこみ上げます。(下図は昭和3年:青のラインは筒川)
現代思想は脳が作り出す「観念」と外界に存在する「客観世界」を繋ぐものとして「身体」への関心を高めています。古地図は観念的形象である歴史と客観的存在である土地建物を繋ぐ身体的な存在です。観念を現実に繋ぎとめるための不可欠の錨のようなものです。歴史的な事象も具体的な場所における人間の行動記録として構成されないと私には現実性が感じられません。