5者のコラム 「芸者」Vol.145

高齢弁護士の嫌われる姿

tanukiinu先生が「弁護士引退日記」で老弁護士が嫌われる姿を紹介しています。

1「経営の苦労」。「ワシも若い頃は経営に苦労したよ、ワッハッハ」というアレです。私が弁護士になった頃、弁護士人口は約1万3000人でした。2017年は約3万9000人です。弁護士が激増しているため、過去に比べて経営が苦しいのは当たり前です。現在とは比較できない「ワシの若い頃」を安易に持ち出す、その鈍感さが若手に不快感を与えます。
2「最近の若い者は」で始まる話。最近の若い者はの続きにはいくつかパターンがありますが良く耳にするのは法曹としての質が低いという話です。司法試験が易しくなったことに質低下の原因を求めます。旧司法試験が難しかったことは確かですが、もちろん全員が優秀というわけではなく、質にバラツキがなかったわけではありません。弁護士の激増は質のバラツキの幅を大きくはしましたが、ロースクール出の若手弁護士にも優秀な方はいくらでもいます。
3「誠実さは経営の要だ」。誠実さは弁護士に求められる最低限の態度で、ごく僅かの例外を除けばみんな誠実に仕事をしているのです。依頼者にとって弁護士が誠実なのは当たり前で、ウリにならないのです。時代が変ったにもかかわらず老弁護士はぬるい世界の苦労話をしたがります。若手弁護士が老弁護士の経験談に耳を傾けるのは彼の自尊心を満足させますが、それだけの意味しかありません。一番良いことは老弁護士と話をしないことです。

「司法改革」によって弁護士の執務環境は大きく変わっています。その変わった環境下で若手弁護士は悪戦苦闘しているのです。たぶん27年以上もこの業界に居る私に現在の若手弁護士の本当の苦労は判っていないのでしょう。私たちも「それ相応の」苦労をしましたが、現在の若手は「それとは別の意味で」大変な苦労をしていることに思いを馳せるべきでしょう。