5者のコラム 「医者」Vol.108
認知の歪みと是正の対策
末松弘行監修「心療内科入門」(金子書房)は「認知の歪みには特徴的パターンがある」と述べた上で次の記述をしています(佐々木直・227頁)。
①恣意的推論(事実とは違う、全く事実無根の否定的結論を独断的に引き出す)②選択的抽出(信念を正当化する根拠を選択的に選び、その他の情報を無視)。③過度の一般化(ごく僅かの事実から一般的結論を引き出し、あらゆる状況に当てはめる)④拡大視と縮小視(物事を極端に誇張したり矮小化する)⑤自己関係づけ(自分と関係が無いことを自分にとって意味があると考える)⑥全か無か思考(「白か黒か・善か悪か」という両極端な範疇で評価する)⑦ポジティブな側面の否認(物事に良い面もあることを認めない)⑧感情的決めつけ(自分の感情を真実を証明する証拠のように考える)⑨「すべし」思考(行動を義務的に考えすぎてしまう・自分自身を追い詰めてしまう。これが他人に向くと欲求不満や怒りに転化)⑩レッテル貼り( 誤った認知にもとづいて否定的な自己像を作り上げてしまう)。
佐々木氏は歪みを是正する対策をこう述べます。弁護士業務でも活用可能ですね。
1認知療法の存在を紹介し、その概要について説明する。
2現在の問題点を整理し重要性をランク付けし取り組む順番を決める。
3自動思考の問題点を認識し<思考・行動・感情>3者の相互作用を理解させる。
4認知の歪みを認識させ、別の視点からの解釈を促す。
5歪んだ認知を現実に適合的な解釈に変えて対処できる方法を身に付けさせる。
6治療経過をまとめ今後の状況を予測し、自分で対処できるよう指導する。