5者のコラム 「医者」Vol.36

細胞分裂をする細胞・細胞分裂をしない細胞

東京大学病院の中川恵一先生は「がんの練習帳№22」でこう述べています。

「がん細胞」は正常な細胞が細胞分裂を行う際、遺伝子複製に失敗して生まれた”不老不死”の細胞です。(略)免疫細胞がすぐに水際で殺していますが見逃されたがん細胞はそのまま成長を続けます。長生きすれば遺伝子のコピーミスも増え、がん細胞を退治する免疫力も衰えます。今や日本人は平均寿命83歳、2人に1人ががんになる時代を迎えました。一方「細胞分裂をしない細胞」にはがんは見られません。心臓の筋肉や神経細胞は生まれた後には基本的に細胞分裂をしません。心臓にがんがほとんど見られないのはこのためです。逆に心臓や脳の動脈がつまるなどで心筋細胞や神経細胞が死んでしまうと再生できなくなります。心筋梗塞や脳梗塞が怖いのはこのためです(週刊新潮09/10/15/)。

弁護士にとって「細胞分裂をする細胞」は法的知識だと思います。法律状態は変化しています。近時は立法のスピードが速いのに加え、新しい判例も日々生まれています。古い細胞がそのままの状態で残っていたのでは有害です。古くなった法律情報を捨て、新しい法律状態にあわせて常に正確に細胞分裂させていかなければなりません。歳を取ると、細胞分裂における遺伝子のコピーがだんだんと不正確になり是正する免疫力も弱くなっていきます。細かい作業が出来なくなっていくのです。弁護士にとって「細胞分裂をしない細胞」は弁護士倫理ではないかと思います。弁護士としての職業規範や弁護士会との繋がりの意識はあまり細胞分裂をしません。ゆえに血管が詰まって酸素化された血液が十分に供給されなくなるや弁護士生命を一気に危うくするように思われます。若い頃は血管がしなやかなので酸素化された血液が十分に心筋細胞や神経細胞を栄養しています。それが劣化するときに弁護士は紛議や懲戒などの対象となって窮地に追い込まれる気がします。 

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