5者のコラム 「5者」Vol.145

自分の予測力と判断力で「つき」を生じさせる

高校時代のクラスメイト(塚本雅巳君)が国際線(ANA)の機長をしているので横川知宏「国際線機長の危機対応力」(PHP新書)を買って読んでみました。

パイロットは常に1つのことに意識を集中させないよう何かに心を留めないようにしなければならない。機長は猛々しいライオンであってはならない。機長はウサギと同じように警戒心を持ち自分に不利な情報や危険の徴候を探さなければならない。理想の機長とは様々な緊急事態にてきぱき対応する機長ではない。緊急事態が起きないように見えないところで手を打って何事も起こらないフライトをするのが理想の機長である。懸念をもちつつも何らかの理由をつけて合理化し懸念を解消しない機長は危険だ。機長は自分の感情や心理状態をコントロールできなければならない。機長が副操縦士にアドバイスされたときの第1声は「ありがとう」でなければならない。副操縦士のアドバイスが間違っていたとしても叱ってはいけない。理想のパイロットのフライトには何も起こらない。それはついている人間の周りに良いことだけが起こり悪いことが起こらないのと似ている。しかしパイロットの場合はその「つき」を自らの判断力と予測力で引き起こしているところに大きな違いがある。

弁護士が1つのことに集中しすぎるのは良くないことです。猛々しいライオンであることを求められる場合も確かにありますが、常に警戒心を持ち自分に不利な情報や危険の徴候を探そうとするウサギであるべき場合のほうがはるかに多いのです。見えないところで手を打ち何事も起こらない(ように見える)進行を心がけるべきです。弁護士が事務局からアドバイスをされたときの第1声も「ありがとう」でなければなりません(怒るなど論外)。弁護士の仕事はパイロットと同様「未来を変えるために将来を予測して現在行動すること」です。たまたま上手くいった(ように見える)仕事に生じた「つき」は弁護士の予測力と判断力の果実なのです。

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