5者のコラム 「易者」Vol.8

神様と仲介業者とカルト資本主義

「スピリチュアリティ」への関心は1960年代から世界中で広まっていました。ベトナム反戦運動(アメリカ)・5月革命(フランス)・全共闘運動(日本)を頂点とする政治の季節の終焉により若者の関心は内的な世界へと向かいました。カルロス・カスタネーダ「呪術師と私」(二見書房)が刊行された1972年以降、日本でも「精神世界」への関心は急激に高まりました(島薗進「スピリチュアリティの興隆」岩波書店7頁以下)。一部の宗教学者が反合理主義の軽やかな言説をまき散らしました。このことが①カルト的新興宗教の興隆、②霊感商法の被害拡散、③精神世界的なマーケティング商法流行の知的土俵を用意したのでは?と私は考えます。
 上記③を代表する船井幸雄によれば、経営者業は意思決定業であり会社全体の命運がかかる決断を孤独のうちに為さなければならない・これは容易なことではない・そこで経営者は「神様?」に相談に行きがちなのだ・そのことを理解するが故に自分は神様のプロになったそうです(島薗前褐15頁以下より孫引き)。これこそ「カルト資本主義」そのものでしょう。
 平成19年2月21日、霊感商法の被害対策弁護士連絡会は日本放送協会や民法各局に対して次の要望書を提出しました(消費者法ニュース№71)。「近時、テレビの超能力や心霊現象などを喧伝し安易に霊魂観や死後の世界についての特有の考え方を断定的に述べて、これを視聴者に植え付けかねない番組が目立ちます。これらの番組はいわゆる霊感商法的手口による消費者被害や宗教的破壊カルトへの入信被害の素地となり、また現実生活からの逃避自殺の一因となっていると考えられます。貴連盟や協会機構においても、このような番組の社会的影響に注意を払い行き過ぎを是正する措置を講じられるよう求めます。」悪質な仲介業者による霊感商売が氾濫しています。私は霊能者と称する変なタレントが何故に公共の電波から消え去らないのか?不思議でなりません。

学者

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