法説・喩説・因縁説
津田前秀氏は「僧侶が語る易ト十二支の法話」(文芸社)でこう述べます。
仏教では、仏さまは法を説かれるとき、その内容を聴聞している人々に分かりやすくするために「法説(教義の根本をストレートに説く)」「譬説(譬え話を中心にしたやさしい説示)」「因縁説(なぜ今仏様の説法の場にいるのかその原因を過去世から説く)」という三種の説法によって示されます。よって、仏さまの説法にならい、この本を読まれる方が十二支の意味をよく理解でき、より親しんでいただけるために、学問的・歴史的・宗教的(譬え話など)に大きく三つに区分けし、それに相性などの「占い」的なものを付け加え、その各項の最後にまとめとして筆者の私見を述べることにしました。
以下、上記3種の説法についてその特徴を述べます。
1 学問的説法 知性の持ち主に対し論理を重視して説く説法。危険な表現をとるものも含まれているため理解が中途半端な者には説いてはならない。
2 歴史的説法 経験的事象をふまえて説く説法。確かな経験に即したものであるだけに穏健な内容であり努力を怠らなければ庶民にも理解できる。
3 宗教的説法 庶民が感覚的に理解できるよう身近なものに置き換えて説明する説法。視覚に訴える手法や聴覚・体感に訴える手法も含まれる。呪術的色彩が強い。
法律実務は学問的議論(理論)を基本とし歴史的議論(事例・判例)を補充しながら地味に営まれてきました。この運用が可能だったのは接する者がプロだけだったためです。しかし市民が実務に触れるようになれば呪術的議論(譬え・感覚)が増えるでしょう。法理論の中でも「特に世間ウケが悪い理論」はバッシングを浴びて法律実務の世界から消え去るのかもしれませんね。