5者のコラム 「易者」Vol.122

死ぬときくらい好きにさせてよ

「スポットライト」(16/7/28)の記事。>2016年1月5日の新聞4紙に掲載された、女優・樹木希林さんを起用し話題となった宝島社の企業広告『死ぬときぐらい好きにさせてよ』が第64回「朝日広告賞」グランプリを受賞しました。また今年から新設され読者投票で決定する「朝日新聞読者賞」も同時受賞。この広告が多くの人たちの心を打つものだったと改めて感じる結果となりました。死について考えることでどう生きるかを考えさせられる広告の写真は、ジョン・エヴァレット・ミレイの名作「オフィーリア」がモチーフとなっています。シェークスピアの悲劇「ハムレット」で、恋人のハムレットに自分の父を殺され気がふれてしまったオフィーリアが川に落ち沈みゆく命の最期の場面を描いたと言われたこの1枚。美しい色彩と穏やかな樹木希林さんの笑顔が印象的です。キャッチコピーの下に書かれているフレーズも多くの人の心を掴みました。

人は必ず死ぬというのに長生きを叶える技術ばかりが進歩して。なんとまあ死ににくい時代になったことでしょう。死を疎むことなく死を焦ることもなく1つ1つの欲を手放して身じまいをしていきたいと思うのです。人は死ねば宇宙の塵芥。せめて美しく輝く塵になりたい。それが私の最後の欲なのです。

私は本コラムが600本に達した頃から事務所の身じまいを意識し始めました。閉鎖を意識して不要になった書籍・ファイル・備品の処分を少しずつ始めたのです。飛行機に例えると着陸する空港が見えてきた感じ。高度を下げ着地を目指す。そして書籍や備品類に込められた自分の1つ1つの欲を手放した後、美しく輝く塵となって弁護士の仕事を終えることを夢見ております。 

役者

前の記事

相手を殺す・自分を殺す
芸者

次の記事

優しく愛情のこもった技術