5者のコラム 「5者」Vol.127

機会費用の概念・法的手続をしない利益

 中村修治さんがFB上でこう記されています。ある経済学者の解説。

「彼らは機会費用が安いのだ。貧乏人に多い」。
 機会費用とは、ある行動を選択することによって失われる他の選択可能な行動のうちの最大利益を指す経済学上の概念である。数百円のタダ飯のため数時間並ぶのなら暖かいコタツに入ってエロ話でもしている方がよい。自分の貴重な時間をタダ飯のため無駄遣いしてはいけない。ましてや最後に怒号をあげるなんてもってのほかである。時間を返せと叫ぶのであれば、まず自分の貴重な1分1秒を見直せ。人柄は「お金」と「時間」の使い方に出る。

弁護士も多少は経済学や会計学の概念に慣れておくべきです。上記「機会費用」の概念も弁護士の仕事に大いに有益なものです。訴訟を中心とする法的手続も「それをすることによる利益」と「それをしないことによる利益」があります。通常の場合、弁護士は依頼者に対し法的手続をすることによる利益しか論じていません。なぜなら法的手続をしないことによる利益は弁護士には普通判りようがなく依頼者自身が判断すべき場合が多いからです。特に人生の選択(離婚など)における両者の比較検討など弁護士は絶対に出来ません。しかし企業(特に依頼者が顧問である場合)では長期的に見た場合のメリット・デメリットを後見的に考えておく必要が生じます。企業活動は貴重な資源を配分して最大の利益を目指す合目的的な行動の集積です。ゆえに法的手続の機会費用を考慮する必要があります。特に対象とする法的行為の経済的価値が低い場合、法的手続をすることによる利益と法的手続をしないことによる利益はシビアに比較される必要があります。目的的合理性を追求する企業に於いて機会費用の内容は重要な判断要素です。弁護士も経済学的観念に慣れて、自分の意見を企業者にきちんと説明出来るように地道な学習を継続すべきでしょう。