森田療法のマネ
森田療法は学生時代から知っていました。が森田療法による具体的治療方法を知ったのは弁護士になった後です。業務の中で疲れ果て自分の心が病となったら森田療法による治療を受けたいと私は考えていました。森田療法は森田正馬(1874-1938)発案による神経衰弱の治療法。薬物を用いず「心のあり方」を改めることによって人間本来の健康な心を回復しようとするものです。治療は大きく「絶対臥褥期」と「作業期」に分けられています。「絶対臥褥期」は部屋に閉じこめられ面会も会話も読書も全て禁止。許されるのは食事と排泄と入浴だけ。この状態で数日過ごすと世間にまみれた心のアカが落ち素直に「誰かと話したい」と思うようになります。森田療法はこれが人間本来の心の欲求だと考えます。この欲求を自覚したら「作業期」に入ります。軽い散歩・掃除・洗濯などが課され、次第に大工仕事や運動など社会性の強い活動に移行します。作業期には日記を付けることが求められます。日記には医師のコメントが付され「あるがままの心」を受け入れるよう個別指導がなされます。日記内容が気分よりも行動の記述が増えてくると症状の改善と考えるようです。森田療法は医師の権限が強い療法なので優れた医師の下で行わないと治療効果は期待できないようです(高良武久監修・大原健士郎編「現代の森田療法・理論と実際」白揚社)。
弁護士実務の中で森田療法のマネをすることがあります。心の動揺が大きい依頼者には世間からしばらく距離を置くことを勧めます。依頼者に簡単な手作業を求めることがあります。事実経過を冷静に振り返ってもらうために経過表を作成して貰うこともあります。弁護士にとり有益であるだけではなく依頼者にとっても自分の心を見つめ直す良い契機になると私は考えています。