強い男と弱い女?
ロバート・キャンベルさんが「井上陽水英訳詞集」を発刊されました(講談社)。作品刊行を記念して行われたインタビュー(ブロゴス)での発言。
「とまどうペリカン」という曲はペリカンがライオンを追いかけている状況を歌ったものです。それほど英語は難しくないのですが翻訳に満足しなかったので、ライオンとペリカンの関係性を考え直してみることにしました。私は若い頃にこの曲を聴いていて、たてがみを揺らし強そうに前を歩くライオンが男で、後をついていくペリカンが女だと理解していたのですが、いざ翻訳してみると、だんだん逆のように思えてきた。もしそうなら英語の調子も少し変わってくるんじゃないかと思って陽水さんに聞いてみたんです。そしたら「それに1票。実は僕も最近歌っていてライオンはメスじゃないかと思うようになったんだ」とおっしゃって。ライオンはすごく強くて素敵な女性なんだけど、百獣の王として振る舞うからその後始末をしなければならないのはペリカン。そのペリカンがうかつに近づくと爪でやられてしまう(笑)。だから最後に「私はとまどうペリカン」となる。もちろん正解があるわけではないのですが、陽水さんの詞の世界には字面から読み取れるものだけでなく、常にいくつかの扉が開いている。だから、世代を超えて、それぞれが「自分のストーリー」のように思えるんでしょうね。
卓見です。私も強そうに前を歩くライオンが男・後をついていくペリカンが女だと思ってきました。しかし歳を重ねてみると全然そうじゃないと感じます。昔、美輪明宏さんは「私は『強い男』と『弱い女』に逢ったことがない」と喝破されました。これは真実です。「男は悲しいくらいに弱い・こんなに弱い男がライオンであるはずがない。女はむちゃくちゃ強い・こんなに強い女がペリカンであるはずがない。」そう考えるほうが精神衛生に良い。「私はとまどうペリカン」