弁護士も見た目が9割?
大塚ひかり氏は「美男の立身・ブ男の逆襲」(文春新書)で述べます。
少なくとも自国内は平和な先進国といわれる地域では、どこも「見た目至上主義」が横行している。(中略)社会が豊かになって、カネに余裕が有りさえすれば、誰もがある程度の美を目指すことが出来る。できればできるほど、天然の美を持つ者への畏敬は逆に増して、ますます誰もが「見た目」を気にするようになる。(中略)現代でも、イギリスでは長身であることは上流階級の証明であるといい、アメリカでは歯並びが悪いのは貧しい証拠・太っている人はエグゼクティブになれないというふうに、見た目と階級が連動している(6頁)。
数年前にベストセラーになった竹内一郎「人は見た目が9割」(新潮新書)は言葉以外の情報がもたらす伝達の重要性を判りやすく説いた著作です。竹内氏は「言葉以外の情報」をまとめて「見た目」と表現し、かかる「見た目」による判断が社会を支配していることを明らかにしています。冒頭で竹内氏は他人の情報取得に関するアメリカの心理学者の実験結果を引用しています(18頁)。
顔の表情55% 声の質(高低)大きさ・テンポ 38% 言葉の内容7%
言葉を大事にしている少数の人間が思っているほどには、多くの人は「言葉の内容」に重きを置いていません。が、顔の表情が良かったから裁判に勝った・声の質が悪かったから裁判に負けた、などという事態は、古い法曹養成制度を経た人間にとって耐え難いことです。たしかに弁護士業も客商売ですから、「見た目」を全く気にしないのは問題かもしれません。私も見苦しい格好はしないように多少は意識しています。しかし弁護士の優劣を決めるのは使う言葉の内容であり、顔の表情でもなければ声の質でもありません。法律実務は「見た目至上主義」と正反対です。