5者のコラム 「芸者」Vol.130

大人になるための気づき

評論家・町山智浩氏はブログで「千と千尋の神隠し」を風俗映画だと評します。

日本版「プレミア」「千と千尋の神隠し」についてのインタビューで「どうして今回はこういう話にしたのか」と質問された宮崎監督はこう答えた。「今の世界として描くには何がいちばんふさわしいかと言えば、それは風俗産業だと思うんですよ。日本は風俗産業みたいな社会になってるじゃないですか。」宮崎監督の話を要約すると『千と千尋』は現代の少女をとりまく現実をアニメで象徴させようとしたので性風俗産業の話になった。風俗産業で働く少女を主人公にするアイデアを出したのは鈴木敏夫プロデューサーで「人とちゃんと挨拶できないような女の子がキャバクラで働くことで心を開く訓練になることがあるそうですよ」というようなことを宮崎監督に話したら「それだ」とアニメの発想がひらめいたそうだ。

私は司法修習生になっても「自分の社会適応能力に対する不安」は消えず訳がわからないまま実務を始めました。患者さん(依頼者)の治療(法的手段)に携わることにより自分のビョーキ(社会生活への適応能力欠如)が治っていくのを実感しました。他人を癒やすことは自分を癒やすためのサイコー(最高・再興・採光)の手段です。自分を治療する一番の手立ては「他人の治療をする」こと。「自分の欲望を制御する」最も良い方法は「他人の欲望を制御する」こと。「自分の幸せを実現する」一番の近道は「他人の幸せの実現に貢献する」こと。大人になるとはこういった円環的構造に気づくこと。風俗映画にも擬えることが出来る「千と千尋の神隠し」は深い物語です。

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