5者のコラム 「役者」Vol.92
印象に残る舞台
演劇「万獣こわい」(@宮藤官九郎)を観劇。笑いが絶えない序盤を通り過ぎると次第にホラー世界に引きずり込まれる。脚本のベースになっているのは北九州監禁事件。被害者女性が後の殺人の首謀者だ(自分は直接に手を下さない)。誰が被害者か加害者か判らないという構図。これは数年前に拝見した野田秀樹「TheBee」に共通するものだ。舞台が2段に別れ、上段において裁判の尋問形式による心象風景が描かれていたのが印象的。いかにも現代風の演劇だ。
昔、井上陽水のコンサートに行ったことがある。曲の合間に小話をしてくれた。「南の島に船でいこうとしたら、大量のイカに阻まれて船がどうしても前に進まない。やむなく別の島にいくことになった。着いたところが 『ジャマイカ』。」私は感動した。ものすごく真面目な曲の合間に、これほどしょーもない小話をすることが人を幸せにするのだ。
昔、桂文珍さんの落語を聞いた(中国でデモが多かった時期)。師匠と言われる方は最初のツカミが上手。こんな小話をされた「最近忙しくてねえ、人手が足りないもんだから中国人留学生にアルバイトに来てもらっているんだよ」「そうかい、で真面目にやってるかい?」「ああいい子なんだけど困ったことがあってねえ」「そりゃ何だい?」「午前か午後のどちらかしか来ないんだよ」「ふーん、そりゃまた何故なんだろうね?」「それでね本人に聞いてみたんだよ」「うん」「そうしたらね、こう言いやがった。『だって私ははんにちです。』」