入試における却下判決
平野龍一博士は名著「刑事訴訟法」(有斐閣法律学全集)でこう述べます。
訴訟追行行為は裁判所に対して判断を求める行為であって、さらに申立・主張・立証に分けられる。申立とは裁判所の一定の意思表示を求める行為であり、主張とはこの意思表示の根拠となる事実上または法律上の理由についての判断を求める行為であり、立証とはこの事実上または法律上の理由の存在の判断を求める行為である(24頁)。訴訟追行行為に対して裁判によって示される判断には3種類のものがある。存在・不存在、有効・無効、理由有・理由無である。訴訟追行行為が存在するときは、裁判所はこれに対して少なくとも有効な無効かの判断を示さなければならず、放置しておくことは許されない。訴訟追行行為が有効であるとき、裁判所は理由の有無について審理して判断を示さなければならない。そして理由があるときまたは理由がないときはそれぞれその旨の判断を示さなければならない(25頁)。申立が無効である場合には形式裁判(公訴棄却または免訴)を、申立が有効の場合には実体裁判(理由有の場合に有罪、理由無の場合に無罪)を言い渡す(270頁)。
大学受験にたとえると、こうなります。願書を出さない場合には大学は受験者として認識しません。願書が無効である場合や試験を受けない場合には大学は採点をする必要がありません。しかし、願書を出して実際に入試に赴いて試験問題を解いた場合にはこれを採点して合否を決定しなければなりません。当然のことながら、ほとんどの受験生は実体裁判を受けています。
若い頃の思い出。私は慶応義塾大学に願書を出しました。入試当日は三田の会場に数千人の受験生がいるはずなのに誰もいません。不思議に思って守衛さんと会話。「あのー受験にきたんですけど」「どちらの学部ですか」「経済学部です」「あー、それは昨日終わりました」受験日は22日だったのですが私は23日に行ったのです。 申立は却下されました(笑)。