予防(措置)原則の意味
法規制における「予防原則」とは以下の考え方です(wiki)。
化学物質や遺伝子組換えなどの)新技術に関して環境に重大かつ不可逆的な影響を及ぼす仮説上の恐れがある場合、科学的に因果関係が十分証明されない状況でも規制措置を可能にする制度や考え方のこと。1990年頃から欧米を中心に取り入れられてきた概念であるが「疑わしいものはすべて禁止」といった極論に理解される場合もあり、行政機関などはこの言葉の使用に慎重である。予防措置原則とも言う。
例えば水俣病発生初期段階において、厚生省は「水俣湾内特定地域の魚介類の全てが有毒化しているという明らかな根拠が認められないので該特定地域にて漁獲された魚介類の全てに対し食品衛生法第4条第2号を適用することは出来ないものと考える」という見解を表明しました(1957年9月11日)。立証できない命題の立証を要求する厚生省の回答により排水規制が遅れ被害が拡大したのです。しかし「予防(措置)原則」の考え方が滲透していれば発生初期段階において厚生省は法4条2号を適用しなければならなかった訳です。私は「不確実な科学的状況における法的意思決定」において「今後は地震予知や原子力の安全性の議論の中で将来の惧れが要件事実となる訴訟が増加することが予想される。これを科学的・法律的にどう考えてゆくべきか緊急の課題となろう」と述べました(12/4/28)。差止請求訴訟において「損害発生の虞れ」や対象行為との法律的科学的「因果関係」は原告側に主張立証責任があり、その立証が出来なければ請求は認容されないと解されています。しかしながら、この理論が国民の福祉にとって悪影響を及ぼすのならば理論自体を変えることを検討すべきです。対象行為が環境に重大かつ不可逆的な影響を及ぼす場合は政府・企業にも甚大な悪影響を与えるのです。司法も積極的意思決定を行うことが必要な場合もあります。