5者のコラム 「学者」Vol.24

予備校で勉強させてもらった有り難さ

九州大学の受験に失敗した時、父からは仕事をするように言われました。しかし水城学園の特待生試験に拾ってもらい無料で行けるようになったので、予備校に通うことが出来ました。当時の水城学園は素晴らしい講師陣を揃えていました。英作文の考え方を鍛えて頂いた三浦新市先生・現代文を論理的に読む訓練をしてくださった佐藤勝先生・エレガントな数学の解き方を教えて頂いた平井孝治先生。公立高校では触れることが出来ない魅力的な授業により私は知らず知らず受験を超えて学問の楽しさまで教えられていたように思います。司法試験時は辰巳法律研究所にお世話になりました。法学部生でない私にとり教科書を執筆している先生方の話を聞ける機会は貴重でした。憲法の内野正幸教授・民法の林良平教授・刑法の中山研一教授・商法の木内宜彦教授などの講義を聞けたことは私の法律学理解にとって大きな力になりました。辰巳小教室で2年間ゼミを担当いただいた加藤晋介弁護士には法律論を構成する意味を徹底して教えられました。
 現役の頃は受験直接接関係の無いことばかりしていました。大学受験に失敗し初めて入試に繋がる勉強をする気になりましたし人生の方向性を決めるべき状況になり初めて実学を修める気になったのです。観念論に走りがちな私が実践的知見を修めることが出来たのは「ちょっと寄り道」する時間を与えられたからに他なりません。司法制度改革において予備校は悪として宣伝されました。法務省的価値観では正規授業を受けるだけで合格できる生徒が良いのかもしれません。しかし結果に結びつく勉強だけを行う効率的な正規教育が良いとは全く思えません。予備校は受験テクニックの詰め込みだとの批判もありましたが、それが予備校の全てではありませんし、受験は受験として割り切った方が本物の勉強をするためには有効だとの見方もあり得るのです。