リーガルマインドの水的性格
「ニュートン別冊・水のサイエンス」はこのように述べています。
1 水は自然界の中できわめて異常な性質をもつ物質である。私たちは日常生活のなかで固体の水(氷)も液体の水も気体の水(水蒸気)も目にすることが出来る。
2 同じ体積で比較したとき、固体の方が液体よりも軽いという性質をもつ物質は、水の他にはケイ素(シリコン)やチタンなどの数種類しか存在しない。
3 海が多種多様な元素を溶かし込んでいるのは、水が色々な元素を溶かし込むことが出来る物質だからである(13頁)。血液や組織液に多種多様な物質が溶けているのは、血液や組織液の主成分である水の溶解力が大きいからである。
4 水が根から樹上へと道管・仮道管の中を移動できるのは、水の凝集力が大きいためだ。
5 水は温まりにくく冷めにくい(比熱容量が大きい)という性質を持っている。
実務法曹の「リーガルマインド」は水に似ています。
1 法曹のリーガルマインドは場面に応じて姿を変えます。それは社会から見れば若干「異常な性質」を持つものです。極論を言えば、この特性を喪失した実務法曹の存在意義はありません。
2 法曹のリーガルマインドは固体(要件・効果の機械的思考)である時よりも液体(器に応じて姿を変える柔軟な思考)である時のほうが「重み」があるように思われます。
3 法曹は社会の色々な悩みを引き受ける存在です。これを解決する存在である法曹のリーガルマインドは悩みを溶かしこむ「溶解力」を持たなければなりません。
4 法曹のリーガルマインドは「凝集力」に支えられたものでなければなりません。実務法曹間の信頼があってこそ初めて社会問題の解決が可能となるのです。
5 法曹のリーガルマインドは「比熱容量」が大きいもの。それゆえ温めるには大きなエネルギーが必要です。しかしながらいったん温まれば容易には冷めません。