トリアージと搬送
災害時の救急医療では3Tが基本とされます。トリアージ(Triage)応急処置(Treatment)搬送(Transportation)です。災害現場は医療需要がその地域の医療供給能力を遙かに超えます。そこで需要を抑制する技術と供給を増加する技術が問われることになるのです。
(需要側) トリアージとは選別を意味するフランス語。不足する医療資源を多くの方に割り振ることが出来るか問われる場合に治療の優先順位を決定することです。
(供給側) 災害現場には十分な医療資源も時間もないので応急処置が必要となります。その上で災害地から通常医療が出来る場所まで患者を搬送すること・あるいは逆に医師を災害地まで派遣して医療の供給能力を高めることが重要となります。災害時はパニックやライフラインの切断が起こりやすいので日頃の連絡体制の確立や訓練が欠かせません。
弁護士業務においても法的需要が自身の供給能力を超える事態は生じ得ます。
(需要側)職務状況が限界に近い場合、漫然と受任を続けるのは不適切。弁護士に受任義務はありませんから新規受任は避けるべきです。特に受任の必要性が相対的に低い方の受任は避けるのが賢明です。職務状況がシビアな場面ほど弁護士にもトリアージの能力が問われるのです。(供給側)トリアージを行っても早急に対応すべき相談者が出現してくることはあります。かような場合に単に依頼を断っていたのでは弁護士全体に対する信頼を損ねます。そこで重要なのが応急処置と搬送です。本人名義の内容証明や答弁書等を起案して渡すことがあります。次に供給能力に余裕のある他の弁護士を紹介する等して法的サービスの供給能力を拡張することが求められます。