5者のコラム 「学者」Vol.139
コロナ「自粛」で書いた小文
コロナ「自粛」生活の中で書き綴った小文4本。(2020年4月中旬)
人間の不幸というものは、ただ1つのこと、すなわち部屋の中に静かに休んでいられないことから起こるのである。社交や賭事の気ばらしを求めるのも自分の家に喜んでとどまっていられないことから起こるのである(パスカル「パンセ」139)。
昨日「道の駅くるめ」にて新鮮な野菜を購入したので今朝は美味しいサラダを味わえました。「未知の疫」に対抗するためには健康な食生活が何より大切ですね。
マクニール「疾病と世界史」(中公文庫)より。速やかに宿主を殺してしまうような強力な病原体は自分のほうも危機に陥る。他方で宿主に完璧な抵抗力(免疫力)があれば病原体を即時に危機に陥れる。ゆえに病原体にとって最も有効な戦略は「特定の宿主の身体に保存されたままでいられる状態」である。この宿主は自分では発病しないのに他人に病気を感染させる可能性を持つ。この知見をふまえれば現在の倫理とは「発病していない自分が他人に病気を感染させる可能性を持っていること」の認識およびこれにもとづく行動ということになる。
現代を予言したと評される小説「ペスト」(1947)を創作したカミュは1957年ノーベル文学賞を受賞した後、1960年自動車事故で突然この世を去ってしまった。彼はこの世を去る瞬間まで「自分の現実的な死」を実感しないままで亡くなったのだろう。論争していた哲学者サルトルのいう「おまけに死ぬ」というあり方を(良くも悪くも)実践してみせたということかもしれない。