ケンカ代行業的な仕事
渡邊洋一郎弁護士「弁護士道に向けて」の記述。
弁護士業の中核は私法的解決ですが、司法の場で争われるのは主に当事者間の紛争です。その紛争の一方当事者を担って争うわけですから、それはいわゆるケンカの代行業のようなものなのです。やくざと違うのは暴力で解決しようとするか・法で解決しようとするか、という解決手法だけです。ですから決して綺麗な仕事ではありません。また勝ち負けを争うわけですから、精神的にプレッシャーのかかる仕事です。私は、少しでも早く何か正業に就かなければと思いながらとうとうこの齢まで弁護士を続けてきてしまいました。ここで申し上げたいのは弁護士の業務は決してきれい事ではないということです。「人間を磨き」「心を磨き」続けていかないと、紛争当事者と同じレベルの人間に陥ってしまう危険性があります。
「紛争当事者と同じレベルの人間」という言い方は(依頼者を人格的に欠陥のある方々とみなしているようで)あまり好きではないのですが、弁護士業務が決してきれい事ではないということは渡邊弁護士が言われるとおりです。「人間を磨き」「心を磨き」続けていかないと本来の自分のあり方を見失ってしまう危険性があることは間違いありません。プロとしての役者を目指す途上の若い方の中には(役にはまりすぎて)心の安定を失う方がいると聞いたことがあります。舞台上で全く別の人格を演じるのですから、あり得ることです。しかしながら、一流の役者さんは自分を見失いません。舞台上と舞台外をきちんと演じ分けることが出来ます。同様に弁護士は訴訟上の自分の役割を演じ分けられるように「人間を磨き」「心を磨き」続ける必要があります。依頼者からは勝ちを期待されて争うわけですから、精神的にプレッシャーのかかる仕事ですが、それによって本来の自分のあり方を見失ってしまわないように精進を重ねる必要があります。弁護士業務がケンカ代行業的色彩を帯びているのは間違いありませんが、それだけの仕事ではないと私は感じています。