5者のコラム 「易者」Vol.60

キリスト教の光と影

A キリスト教が神に対する愛に立脚するですって?とんでもない。キリストの名のもとに多くの侵略や戦争が起こりました。キリスト教は世界を不幸にした偽善の宗教ですよ。
B そういう面があるかもしれません。でも、あなたはそんなにキリスト教が嫌いですか?
A ええ大嫌いです。キリスト教は「独善的な侵略者の宗教」です。植民地主義者たちは宣教師を世界中に派遣し、キリストに対する親和的土壌を広げた上で、政治経済的支配を広げていった。「一神教」思考により善悪を厳格に分け、土着の神を悪に・自己を唯一の善として仕立て上げていったのです。キリスト教の教えを「神に対する無条件の愛」などと説明する教科書執筆者たちは「植民地の歴史」を少しでも学んだことがあるのか?と疑いたくなります。
B なるほど、そうですね。そういうマイナスの面もありますね。ただ、そう言うからには、あなたはキリスト教が世界の歴史に与えたプラスの面を意識していますか?
A キリスト教が与えたプラスの面ですか?そんなものあるんでしょうか?
B 人権の観念は他の宗教圏では生まれていません。民主主義の思想もキリスト教国で最も発展しました。絵画や音楽にもキリスト教由来のものが多数あります。医療施設や優れた教育機関はキリスト教国で最も発展したと言えます。宣教師が世界で受け入れられたのは医療や教育など住民の現世利益を向上させたことによる面も大きかったのではないでしょうか?
A なるほど。そうですね。宗教の評価はかなり難しいものなのですね。
B ええ。キリスト教を「独善的で差別的な侵略者の宗教!」と断定するのも「一神教的思考」だと私は思いますよ。キリスト教には良い点も悪い点もあると考えたら如何でしょう?
 (藤原聖子「教科書の中の宗教・この奇妙な実態」岩波新書を底本に構成)

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