5者のコラム 「役者」Vol.17

アメリカの古典的弁護士像

アメリカの古典的弁護士像は依頼者以上の支配と責任を持って臨み適切な解決を示すもの。かかる権威的弁護士は次の手法で依頼者を操作します(菅原郁夫他編「実践法律相談」東京大学出版会)。

①弁護士は自分の不得意な領域の問題や法がうまく機能しない領域の問題に直面したときに、あくまでも法を適用し依頼者の利益のみを図るというよりも、あたかも調停人のように法律家としての自分自身の利益や法制度の利益のために調整を図り、依頼者の求めるものを弁護士が必要とするものに変えてしまう。②弁護士は会話の内容・順番・構造を支配することにより弁護士の慣れ親しんだパターンに事件を変えてしまう。依頼者が自分の話をしようとするとそれを遮り、弁護士の視点からの話を始める。依頼者が何を求めているのか語る前に、あたかも反対尋問のごとく依頼者を問いつめる。話題は弁護士が慣れ親しんだ法律の典型事例へと導かれることになる。③法専門家としての内部情報を駆使する。弁護士は依頼者の意向に配慮するよりも、実際の裁判官や相手方弁護士が無能で配慮のないことを強調し、訴訟制度が負担加重で遅延していることを強調する。また、一般的ルールではなくその地域のみに通用しているローカルルールを強調することによって、弁護士は教養ある依頼者でさえ知ることのできない司法の内部精通者として神秘的力をまとうことになる。

著者は読者たる弁護士に対し「相談者に接するにあたり自分自身が無意識のうちにこういう手法を用いていないか十分注意する必要があろう」と記します。弁護士にとっては「事実」が最も重要。事件の「解釈」が過ぎると事実とかけ離れます。自戒が必要です。