おもてなしの心構え
ホスピスとは巡礼の旅路において修道僧たちを無償で泊まらせた施設を指します。その後「ホスピス」は「ホテル」と「ホスピタル」に分かれますが、もてなしの精神は共通しています(田崎真也「接待の一流・おもてなしは技術です」光文社新書15頁)。法律事務所にもホスピスたる性格があるのではないかと私は考えます。「ホテル」にせよ「ホスピタル」にせよ、疲れた人が体を休ませる施設なのですから、弁護士には「おもてなしの精神」が必要ですね。
おもてなしの基本的心構えとして田崎氏はこう述べます。
ホスト側はゲストの大切な時間を自分が預かっていることを忘れてはいけません。「いい時間をすごせた」とゲストに思ってもらえる努力をすべきです。そのためにゲストに対して気を配り尽くし思いやる。これらが「接待」の最低限の心構えであり義務です。これらがあってはじめて接待をする意味が生まれてきます。ゲストは自分の時間をホストに提供しているわけですから当然楽しむ権利がある。だから、ホストはゲストを一生懸命に楽しませ、もてなす必要がある。お金を払うんだからそれでいいじゃないという考えにもとづくふるまいではゲストは帰り際に「ごちそうさまでした」といっても「楽しかったです」とはいわないでしょう。
弁護士という仕事は自分の時間を売る商売です。が、他方で弁護士という仕事は他人の時間を預かる商売でもあるのです。弁護士はホストであり依頼者がゲストです。ゆえにホストである弁護士はゲストたる依頼者の大切な時間を自分が預かっていることを忘れてはいけません。依頼者が弁護士の時間管理を攪乱すると(ドタキャン・突然の来訪・早朝深夜の電話)弁護士は悲しく思います。しかしながら逆に弁護士が依頼者の時間を軽々しく扱うならば依頼者は悲しく思うでしょう。弁護士も「良い時間をすごせた」と依頼者に思ってもらえるよう努力すべきです。