5者のコラム 「学者」Vol.109

経験の無い場面での仮説検証

 羽生3冠は「iRONNA」のインタビューにこう応えています。

質問者 「世の中の変化のスピードが速くなるということは、これまでに経験したことがない、新しい場面に遭遇することが増えるということでもあります。そんな場面でもスピーディに適切な判断をしていくため、羽生さんはどんなことを心がけているのでしょうか?」羽生「過去に経験したことであれば全体像や勝負の流れを把握することが容易です。すると次に指すべき一手もさほど迷わずに決められます。ところが経験したことがない場面では今の状況がどうなっていて、これからどう展開させていけばいいのか見えないことだらけです。それこそ全体の5%とか10%ぐらいしか掴めていない状態で決断を下していかなくてはいけない。そんな中で私が心がけているのは、たとえ5%しか見えていなくても全体像についての仮説を立ててみることです。頭の中で海図を思い描き、大海原の中で、今自分はどの辺りにいてどこを目指すべきなのかをイメージするのです。もちろん仮説は外れることもあります。しかし、仮説検証を繰り返すうちに次第に全体像をイメージする精度が上がっていくと考えています。最初は最低でも30%は見えていないと掴めなかった全体像が20%や15%ぐらいでも掴めるようになっていくはずです。すると『だいたいこの辺りに指せば間違いないだろう』という直感力も働かせやすくなります。」

 社会変化の激しい時代に法が追いついていない状況が生まれています。今の状況がどうなっていて、これからどう展開させていけばいいのか、法律家には見えないことだらけです。だからと言って具体的に問題が生じているときに「法律家が何も出来ない」では存在意義を問われます。全体の5%か10%ぐらいしか掴めていない状態でも法律家は決断を下していかなければなりません。

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