法律業界における「セーの法則」
供給が需要を作りだすという「セーの法則」はケインズにより否定されました(「雇用・利子・お金の一般理論」講談社学術文庫76頁)。が司法改革推進論者は「セーの法則」を信奉している感があります。坂野智憲弁護士はブログでこう述べます。
しかも大学の多くは望んで法科大学院など作ったわけではない。少子化の中で法科大学院がないと法学部生が集まらないだろうとの考えで仕方なく作ったわけだ。法科大学院生に至っては法科大学院修了が司法試験受験資格とされたために仕方なく入学したわけで、誰も好きこのんで借金したわけではない。法科大学院の窮状については合格者数が予定の3000人を下回っているためだという意見もある。しかし合格者数2000人でも就職難で法曹となるのが難しくなっている。そのために法科大学院志望者が減って大幅な定員割れを生じている。(略)結局、司法試験合格者数激増政策も、それを可能にするために作られた法科大学院制度も、経済合理性を有していなかったということなのだと思う。例えばトヨタの社長が「国民はもっと自動車を買うべきである」「トヨタ車はあまねく日本の津々浦々を走るべきである」と確信し、そのために自動車生産数を3倍に、工場も3倍に増やしたとする。しかし常識で考えて売れるわけがないし売れなければ工場は当然閉鎖される。それどころかトヨタ本体は倒産の危機に瀕するだろう。弁護士の数だって同じことだ。弁護士も経済社会の中で存立を許されているのであって霞を食べて暮らしているわけではない。経済合理性を有しない法科大学院は次々に統廃合を余儀なくされるだろう。
法律業界にだけ「セーの法則」が妥当する訳がありません。有効需要の少ない中で供給だけ増加させても不合理性です。合理性の無い制度は長続きしません。