5者のコラム 「役者」Vol.40

戦後日本の外交政策

 内田樹先生は戦後日本の外交を次のように分析します。

日本がほんとうに「親米的」であり、かの国の行く末を真剣に気づかっているとする。だとしたら、日本がまずなすべきことはアメリカとその「仮想敵国」たちのあいだの和解を周旋し、アメリカが「世界から敬愛され、その繁栄を世界中の人が望むような国」になるように一臂の力を貸すことであろう。ところが戦後65年間日本人は「そんなこと」を一度もしたことがない。日本は「アメリカが世界中の人々から敬愛され、その繁栄を世界中の人々が望むようになるため」には指一本動かさなかった。これはほんとうである。その代わりに朝鮮戦争のときもベトナム戦争のときもアフガン侵攻のときもイラク戦争のときも「それをするとアメリカの敵が増える政策」については日本政府はきわめて熱心な支持者であった。(略)私の判断では小泉純一郎は「アメリカ帝国の没落」に最も大きな貢献を果たした外国人政治家の一人である。それゆえ私は小泉の対米戦略をもっぱら「悪意」という動機によって説明できると考えている。彼はA級戦犯の祀られている靖国神社に公式参拝してアメリカ主導の東京裁判の歴史的意義を全否定してみせた。また「規制緩和・構造改革」と称して、あきらかに日本の風土になじまないアメリカ的モデルを強権的に導入し日本国民全員が痛みのうちに「だからアメリカの制度はダメなんだ」という合意に達するところまで社会制度を破壊してみせた。日本人の「アメリカと戦って次は勝つ」という抑圧された欲望はさまざまなかたちをとって回帰してきた。その中で最も成功したのは「アメリカが愚かな自滅的な外交政策を採るときにはそれを全力で支援する」というものであった。

 アメリカ政府が多国籍企業・軍需産業の利益のために時に自滅的な演技をすることは従来より指摘されています。日本政府はその最も良い共演者であったようです。

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