情報断食をする意義
石蔵文信氏は毎日新聞「医療プレミア」で次のように述べます16/2/27)。
私の個人的印象であるが、最近うつ病などのストレス関連疾患が増えてきた原因の1つに「情報過多」があるように思える。うつ病発症のメカニズムはいまだにはっきりしていないが、主に脳内情報伝達物質であるドーパミンやノルアドレナリン・セロトニンが少なくなった、もしくは、うまく情報が伝わらなくなったことが原因と推測されている。ドーパミンやノルアドレナリンは脳を覚醒させ・集中力を高め、楽しい・心地よいという感情や記憶・積極性・痛みの軽減などの役割があるので、不足すると無気力・無関心になり意欲が低下してくる。一方、セロトニンは精神の安定に関係し、癒やしの物質と呼ばれている。不足すると精神状態が不安定になり・自律神経の調節が悪くなるので、めまいや動悸(どうき)、胃腸障害など体中に異変が起きる。つまり元気が出ないのはドーパミンやノルアドレナリンの不足、精神が不安定で自律神経失調なのはセロトニンの不足とざっくり考えてよいだろう。さて、これらの情報伝達物質はその名のとおり、脳内の情報が多いほどたくさん使われ、そのうちに消費が生産を上回って不足するようになる。これがうつ状態や強い不安感に悩まされる原因であろう。我々が処方する抗うつ薬はこれらの神経伝達物質を間接的に増やす(正確には受容体に作用して一見増えたようにする)作用がある。薬が効くとやる気が出て気持ちが落ち着くようになる。しかし、いきなり頑張り始めると伝達物質がまた少なくなってうつ状態に戻る。
情報は必ずしも人間を幸せにしません。なので心の健康を維持するために、ときどき「情報断食すること」(@羽生3冠)をお勧めします。例えば脳を使わない時間をつくる・テレビを観ない日を設ける・SNSに繋がない時間を設ける。これらがストレスを減少させる秘訣です。