5者のコラム 「医者」Vol.119

心の問題で生じる身体の病への対処

 夏樹静子さんは長年腰痛に悩まされていましたが、心療内科医の治療を受けて軽快されました。この経験をふまえ「心療内科を訪ねて」(新潮文庫)で次の記述をされています。

鍼灸・気功・整体・カイロプラクティック・マッサージ・足の裏をもんだり・低周波をかけたり。こんな羽目になるまでは無縁だったが多種多様な民間療法は限りなくあった。私は勧められたほとんど全ての治療院を訪れた。(略)知人の紹介で東京から心療内科医師の訪問を受けたのは95年盛夏である。彼はソファに横たわった私から生育歴から現在の症状までを約2時間かけ聴き取った。私が大学病院で何回も精密検査を受け器質的疾患が発見されなかったことも確認した。その後で彼は自信のある口調で言った。「典型的な心身症ですね。最も簡単に言えば、心の問題で起きる身体の病の総称です。」「でも心因でこれほどの激痛が起きるとは考えられません。」「いや、心因性だからこそ、どんな激しい症状でも現れるのですよ。」夏樹さんはこの本で(自分を含めた)14人の症例をあげ、心療内科がカバーする疾患がいかなるものか・どう治療していくか、について素人にも判り易く説いておられます。夏樹さんによると、患者の多くが「何故良くなったか?」という問いに「先生にゆっくりと話を聞いてもらったこと」「私の心の中に押し込めていた感情を発散できたこと」「詳しく聞いてもらったあとの短いアドバイス」と答えておられるようです(227頁)。

 法律実務においても心の問題で起きる身体の病を抱えておられる方は見受けられます。医療的対処が必要な方には専門医を紹介していますが、軽症の方は弁護士が「ゆっくりと話を聞く」「心の中に押し込めていた感情を発散してもらう」「詳しく話を聞いたあとで短い的確なアドバイスをする」等の対応をすることで結構な治療効果を上げられるのかもしれません。

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