5者のコラム 「役者」Vol.88

後輩から「辞めたい」と相談されたとき

大滝修治さんはこう発言されています(木村隆「演劇人の本音」早川書房)。

Qもし後輩から「役者をやめたい」と相談されたら大滝さんはどう言いますか?大滝 やめなさいと言います。Q冷たいですね。大滝 役者って大体誰でも天狗になっているところがある。僕自身そうだものね。自分の力を過信する。チャンスが無かっただけだと思っているんです。でも本人が何かを突き詰めて考えて、考えて決心したのなら、とにかく人が無責任に言わない方が良い。Q そう突き放されたら逆にやめられなくなります。大滝 でしょう?やめられなくなるでしょう。そうなんです。それでいいんです。この野郎、先輩ぶって偉そうに言うなと思えばそれだけで効果はあったと思います。

 後輩から「弁護士を辞めたい」と相談されたとき私は大滝さんのように「辞めなさい」と断言できるでしょうか?その後輩が素直に反応して自分の意思で辞める決断をする人なら辞めれば良いでしょう。逆に反発して辞めない意思を固める人ならばそれでも良いでしょう。私も弁護士を辞めたいと感じたことが何度もあります。が弁護士になって良かったと感じたことがそれ以上にあります。弁護士は私の知識と経験を生かせる唯一の仕事であり自分の知識と経験を生かせる仕事は他に存在しません。なので弁護士を辞める決意をしたことがありません。他方、私は顧問先や依頼者に恵まれています。職員の雇用責任を負っています。家族の生活の糧でもあります。責任を負っている職業を簡単に辞められるものではありません。なので後輩から「辞めたい」と相談されたら私はこう言うでしょう。「本当に辞めたいんだったら、本当に辞めれるんだったら、辞めれば?」