法律コラム Vol.147

自由財産の範囲拡張

以前、破産手続において破産財団に属しない財産(自由財産)の範囲を拡張することに関し「破産管財人として提出した消極方向の意見書」を紹介しました(Vol.86)。今回は私が「申立人代理人として管財人に提出した積極方向の意見書」です。両者を比較すると立場の違いが良く判ります。

1 意見の趣旨
  別紙軽自動車は破産財団に属しないものとして扱って頂きたく強くお願いする。
2 意見の理由
 破産法第34条4項は自由財産範囲拡張に関する基準を次のとおり定める。
① 破産者の生活の状況
② 破産手続開始の時において破産者が有していた前項各号に掲げる財産の種類及び額
③ 破産者が収入を得る見込み
④ その他の事情
本件においてこれをみるに
①  申立人は大腸癌を患っており平成*年*月に癌を切除し人工肛門を装着した。事後も主治医の継続的治療を受けている。*月*日以降に再入院をして治療を受ける方針を主治医から伝えられており病状は思わしくない。治療の費用が相当程度に見込まれている他、家族も入院準備・医師面談・その他病院と自宅の間を往復する機会は極めて多いものと見込まれている。
② 一般的換価基準によると自動車は処分見込額が20万円を超えない限り換価しないとされる(初年度登録から5年を経過したものは特に高級車で無い限り処分見込額はゼロ)。本件軽自動車は査定書で9万7500円と評価されており基準を満たす。その上に本件軽自動車には複数の損傷があるので中古車業者が本件軽自動車を20万円を超えて買うことは普通ないはずである。
③ 破産者は2ヶ月毎に給付される国民年金(月額*万*円)しか収入がない。
④ 本件自動車は*年頃に現金*万円にて一括により購入したものである。その資金を拠出したのは妻(*万円)と娘(*万円)である。名義は申立人としているが実質的には妻と娘の共有に属する。前述のとおり申立人は癌治療のための費用が相当程度に見込まれるところ、2ヶ月毎に給付される国民年金しか収入がない。家族が入院の準備・医師との面談その他病院と自宅との間を往復する機会は多い。この軽自動車が無くなった場合には著しく不幸な状態が生じる可能性が高い。
 よって本件軽自動車を「破産財団に属しないもの」として扱って頂きたい。

* 上記意見書を受けて管財人から裁判所に対し「財団からの放棄許可申請」がなされました。
速やかに裁判所より「財団から放棄すること」の許可がなされました。良かったです。

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