法律コラム Vol.5

法務局の統廃合

 行政機関の効率化の一環として法務省は地域の法務局の支局・出張所の統廃合を進めています。しかし、これは法務省が進めているはずの地域の権利擁護機能の拡大に矛盾するものです。そこで私は昨年の担当副会長として下記意見書を作成して福岡法務局長に提出しました。

(意見書の骨子)
 平成17年10月17日、福岡法務局から突如として平成18年10月を目処に(福岡法務局柳川支局)大牟田出張所を廃止して柳川支局へ統合する方針案が表明された。その理由として大牟田出張所の登記件数が法務局統廃合基準(1万5000件未満)を下回る1万3000件であること、近くに約30分程度で行くことができる法務局があること等が挙げられる。しかし我々は、このような安易な理由で法務局の統廃合を議論するのは、地域社会における各種権利義務関係を明確にしてその社会経済的活動を支えている登記手続への支障をもたらすだけではなく、法務局が担う人権擁護機能や住民への司法サービスの観点を没却したものとして到底許されないと考える。
 第1に、法務局は法務省管轄下において登記制度を担うほか、戸籍の整備や地域における国の人権擁護機関としての役割を持っている。大牟田出張所の管轄人口は大牟田市、高田町を合わせると15,6万人を擁し、その管轄人口のきめ細かな人権擁護活動が今こそ求められている。男女差別等各種の人権問題が未だ根強く残っているところ、かかる人権問題を行政として受け付ける国家機関は法務局しかない。かかる重要な機関が地域から撤退することは地域での人権問題が放置されてしまうことになりかねず、容認できるものではない。第2に、法務局は裁判所と連携した有機的一体として司法機能を果たしている。その一翼を担う法務局が欠けることは、他の機関の機能低下を招き、ひいては住民への司法サービスが低下することに繋がる。例えば、保全処分は一刻を争うことが少なくないところ、供託を行う法務局が近くにあるからこそ迅速な保全手続が出来るのであり、大牟田のように裁判所支部の至近に法務局が無くなれば管轄区域内の保全手続に支障をきたすおそれがある。また、後見登記制度でも登記アクセスが重要になっており、従来東京法務局に一元化されていた登記サービスのうち、後見登記証明書の取得については、平成17年1月から地方法務局でも行えるようになった。日弁連はこれを更に全国の支局・出張所にも広めるべく運動をしているところであるが、大牟田出張所の廃止はその途を塞ぐものである。ひいては大牟田地域における後見制度の運用を担う家庭裁判所支部の機能低下を招くことにもなりかねない。
 今回の法務局統廃合は国家公務員削減計画に基づくものと思われるが、地方の住民サービス・住民の権利擁護に重大に関係する機関を削減することは、地方の切り捨てに繋がるもので到底容認できない。社会正義の実現と人権擁護を担う弁護士会として、今回の法務局統廃合案に対し住民の司法アクセスの低下・権利擁護機能の低下を招くものとして強く反対し、その撤回を要求するものである。

*平成19年3月26日、大牟田出張所は廃止されてしまいました(涙)。

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