法律コラム Vol.113

弁護士会ADR3

久しぶりに福岡県弁護士会紛争解決センターあっせん人を引き受けました。第2回期日で和解を成立させることが出来たので報告書をまとめました。 *私が作成したものですが福岡県弁護士会「月報」編集委員の手が若干加わっています。

  1. 第1回期日まで

    2021年10月1日、筑後の弁護士会事務局から、9月に申立が為された医療ADR事件に関しあっせん人を引き受けることが可能か打診があった。私は医療事件を専門的にやっている訳ではないし、そもそも医療事件がADR手続に乗るのか懐疑的だったので若干気が重かった。しかし事務局から「先生が名簿の順番ですし」と言われるし「医療ADRは合議制になり今回は中野先生と大石先生が陪席につかれます」とも言われるので「豊富な経験を有しておられる両先生がついてくださるのならば何とかなるかも」という楽観的観測にて私はあっせん人を引き受けた。事案は某医療機関の診療内容に不満を抱いた患者による若干の金銭請求である(守秘義務があるので詳しく書けない)。申立人は代理人を付けていなかったので申立書から十分な内容を確認することが難しい状況であった。他方、相手方医療機関には代理人弁護士が就いており本件診療行為は正当なものであって申立には理由が無い旨の(弁護士らしい)書面が証拠資料とともに提出された。意見の隔たりの大きさに私は「和解の成立見込みがないので1回で終了となるだろう」と予想せざるを得なかった。

  2. 第1回期日の状況

    11月5日、筑後弁護士会館ADR室で第1回期日。双方の言い分を聞いた。申立人は1人で来ていた。申立書の印象と異なり申立人本人はかなり冷静で理解力の高い方であった。他方、相手方代理人の診療内容に関する説明には若干疑問を感じざるを得なかった。書面だけで心証を取ってはいけないのだ、少し我が身に引きつけて反省する。その上で相手方代理人に対し疑問点をぶつけた。中野弁護士からはそれを遙かに上回る疑問の提示が為された。さらに(医療機関側で訴訟行為をされている)大石弁護士からも控えめながら的確な問題点の指摘が為されていた。そのため相手方代理人が持ち帰って検討することになり、申立人も期日続行を希望された。私は少し手応えを感じた。帰り際に相手方代理人に対し「次回期日の前に紛争解決に関する相手方の意向をお伝えいただけると有り難い」旨を述べた。何故なら成立であれ不成立であれ事務局には事前準備の必要があるからだ。

  3. 第1回期日後の状況

    1か月程度が経過した頃、相手方代理人から事務所に電話があり請求金額を支払う旨の意向が表明された。私は義務の内容を確認するとともに相手方が希望する条項があれば伺う旨述べた。それから直ぐ和解案のたたき台を作り、中野・大石両弁護士にFAXをして意見を伺った。両弁護士の意見をふまえた修正を行って相手方代理人にFAXした(このとき送付状で成立手数料の必要性と額にも触れている)。翌日、相手方代理人から修正和解案の提示があった。申立人にとっては若干飲みにくい内容に変更されていたので「申立人は大丈夫かな?」と思い直ぐに電話して内容を伝えた。検討するとのこと。大事な点なので詳細は翌日の協議に委ねた。

  4. 第2回期日:和解成立

    期日前に控室で申立人に相手方和解案の写しを渡し読んで貰った。その上で私・中野弁護士・大石弁護士により申立人の意見を伺った。複雑な感情を示されたが最終的に和解案を受け入れるとされた。これを相手方代理人に伝えるとホッとした感情が見受けられた。和解書の原案を双方に示し署名押印を得た。この作業はあっせん人弁護士でなく職員さんが行うほうが手続がスムーズに行くようだ。相手方から申立人に対する和解金の授受を行った。最後に双方当事者から成立手数料を支払って頂いた。和解金を支払うべき相手方が更に成立手数料まで払ってもらえるのか何時も心配になるが、事前にその義務と金額を示していたのが功を奏し気持ちよく支払っていただいた。こうして私どもは本医療ADRで和解を成立させることが出来た。申立書を見た段階では無理だろうと思われた案件であったが関係者の皆様のご努力により無事に紛争を解決することが出来て喜ばしく思う。

* この報告は福岡県弁護士会「月報」(2022年2月号)に掲載いただきました。

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