類似の原理・接触の原理
J・G・フレイザーは「金枝篇」で呪術と宗教を厳密に区別しています。その上でフレイザーは「呪術には行為と結果の因果関係や観念の合理的体系が存在する」と主張し、呪術を「模倣呪術」と「感染呪術」に区別しました。
1 模倣呪術(imitative magic) 類似の原理に基づく呪術。求める結果を模倣する行為により目的を達成しようとする。自然現象を模倣する形式をとる。
2 感染呪術(contagious magic) 接触の原理に基づく呪術。獲物の足跡に槍を突き刺すと逃げ足が鈍るとする・藁人形に釘を打ち込み命を奪おうとするなど。
以上を参考に「弁護士が行使する呪術」を規範的に考えてみましょう。
1 類似の原理による呪術 弁護士が相手方に対して行動するときに何を模倣しているのでしょう?私の印象によると裁判官と執行官を模倣していることが多いように感じています。本来、民事事件における代理人弁護士には相手方に対する何らの権力もありません。しかし、弁護士は自分が相手に対し優越的判断権をもつ裁判官のように振る舞うことで呪術を行使しています。同様に弁護士は自分が相手に対して強制力をもつ執行官のように振る舞うことで呪術を行使しています。この呪術はプロ相手には通用しませんが、素人相手に対してはかなり有効です。
2 接触の原理による呪術 弁護士が相手方に対して行動するときに何に接触しているのでしょう?それは相手方の情報空間です。弁護士は相手方に内容証明郵便を送る際に配達証明を取ります。それが確実に相手方に接触したことを確認するのです。その上で弁護士は自分の依頼者と相手方の直接的接触を絶ち切ることで呪術を行使しています。これはプロ相手にも通用する呪術です。