本人との接し方・信頼関係の構築
NHK記者辻浩平氏はIRE (Investigative Reporters and Editors)年次総会に参加した経験をこう述べています。
今年の年次総会は6月にアメリカ南部テキサス州ヒューストンで4日間にわたり開催された。会場となったホテルで開かれる講座の数は200を超え、講師は第一線の記者だ。立ち見も出るほど人気だった「情報源の作り方」講座では優れた報道に贈られるピューリッツアー賞を2度受賞したニューヨークタイムズ記者が講師となり「毎日異なる取材先と昼食かコーヒーを共にする・その後短くて良いから手書きでお礼の手紙を書く・そうすることで信頼関係を築ける」とアドバイスした。また「インタビューを受けてくれない相手をどう取材するか」の講座では非営利報道機関「プロパブリカ」でピューリッツアー賞を受賞した記者が講演。世間の注目を集める事件や事故渦中の人物は発生直後は各メディアが押しかけ取材が難しいが、数か月後数年後にアプローチすると取材が実現するケースが少なくないと語った。発生直後の取材競争を否定しないが、少し時間が経った後により深い取材を行うことの意義を強調していた。
弁護士は「代理人」であり「取材をする側の人間」に近いので「本人」との接し方として非常に参考になります。私は原則として依頼者との飲食はしません(昔は例外を設けましたが近時は例外もありません)。公私を峻別しています。依頼者への報告書は期日が行われた当日に手書しています。報告書には期日に提出された双方の主張書面と証拠を全部(有利・不利を問わず)添付しています。弁護士は報道された事件の当事者と接することがあります。事件直後は本人も動揺しておられますので、本人が話せるようになるまで待ちます。時間が経った後だからこそ深い会話ができることだってあります。事件直後に不可欠なのは「証拠保全」と「信頼関係の構築」です。詳しい聞き取り(インタビュー)は本人が落ち着いた後からだって出来ます。