法律コラム Vol.143

継続的役務の将来的取消

継続的な役務提供契約に信販会社が絡むと問題の解決が著しく難しくなります。以下に挙げるのは中年の男性が「育毛」に関する高額な(500万円以上)継続的契約を締結し、その代金を信販会社が立て替え払いして男性に請求した交渉事件において、男性側代理人として提示した意見書です。

本件で*(育毛関連会社)からの提案を承諾した場合、*氏に信販会社への*万円もの高額債務がそのまま残ることになります。加えて高率の遅延損害金がつきますので実際支払額はさらに高額化することになります。この和解提案は要するに①*は未使用分の返品等による負担しかせず②加えて10パーセントもの解約損料を徴収する③信販会社は過去の支払分を含め一切不利益を被らない、という意味になります。このような帰結は「正義に反する」と当職は考えます。
 当職は①本件契約は取消又は解除の対象となる②錯誤無効や公序良俗無効の抗弁も成り立つ③この抗弁を信販会社に接続できる(割賦販売法30条の4)と考えています。和解に至らなければ訴訟になるのも仕方ありません。本件請求金額*万円は常軌を逸しています。判断能力に乏しい消費者にこのような高額契約を締結させること自体に問題があります。当職が調べたところ*に関しては全国的に消費生活センターへの苦情が多数存在し、問題点が行政的に認知されているようです。訴訟になる場合は「本件契約の問題点を裁判所に提示できる」と当職は考えています。
 和解の可能性があるとすれば「各当事者が互譲の精神に基づいて損失を負担しあい、結果として将来の請求を無くす」方向です。当職は過去の費消分に関する既払金返還を求める意思は有していません。当職は過去類似事案(対象商品は異なる)にて「①販売店から信販会社に立替金を返還してもらう②各当事者が請求権を互いに放棄する(当方も過去既払分の返還請求権を放棄)」という内容の和解を成立させました。本件に相応しいのはこの方向での和解だと考えます。

* 上記意見書をふまえ当職の提案に沿った内容の和解契約で事案を解決することが出来ました。若干時間はかかりましたけれども円満に解決できて良かったです。(平成15年)

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