5者のコラム 「5者」Vol.5

素直さとプライドの両立

久留米市の翠香園ホテルで将棋の王位戦が開かれた時、私は大盤解説を聞きに行きました。北九州市の蓼沼先生がいるのを発見し「先生もお好きなんですね」と話しかけると、先生は立会人森下九段と大の仲良しということでした。先生から森下九段を紹介され幸運にも私は森下九段の計らいで打ち上げに同席させていただきました。(将棋は谷川さんの角替わり腰掛け銀に対し2四金の新手を出した羽生さんが快勝しました)。憧れの羽生さんや谷川さんと話をさせていただき感激でしたが、羽生さんの輝きに圧倒されて何をしゃべったのか覚えていません。羽生さんが名人になった時、米長永世棋聖は羽生さんのことを「素直でしかもプライドがある」と評されました。羽生さんはいつも笑顔で人当たりがよく他人の注意もよく聞くのです。棋士には個性の強い方が多いのですが、羽生さんは本当に素直なのだそうです。他方で羽生さんは将棋には恐ろしく頑固で極めて高いプライドをお持ちです。将棋界を背負って立っている自負が感じられます。羽生さんは「素直さとプライド」という全く別の(矛盾しうる)要素を若い頃から難なく両立させているのです。
 弁護士を素直さ(人柄)とプライド(見識)を座標軸として分類します。
    ① 素直で、かつプライドがある  ② 素直だが、プライドがない
    ③ プライドはあるが、素直でない ④ 素直でなく、プライドもない
 ①が羽生さんのタイプ。これが理想の弁護士です。②が「芸者」の要素が強い弁護士、③が「学者」の要素が強い弁護士です。④は論外です。こういう方は問題を起こして紛議や懲戒にかかりやすいと思われます。私の事務所にはここ数年、司法修習生が実務修習に来ています。少しばかりの先輩として修習生には上記①を目指してやってもらいたいと願っているところです。

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