5者のコラム 「学者」Vol.34

高学歴ワーキングプア

大学院の重点化が図られた結果、就職口のない大学院生が大量に発生しています。博士過程を終了しても就職口がない者が5万3千人を超えるそうです。大学院重点化は多くの学生を学問というマーケットに留めたい大学と文科省による政策誘導でした。そこから生じる大量のオーバードクターの人生をどうするのかという問題は軽視されていました。
 水月昭道「アカデミア・サバイバル」(中公新書ラクレ)はこう述べます。

日本は政治の中で教育というものを大変に軽く扱っており、そのことも教育界に市場主義をはびこらせる一端を担いでいる。なにせ教育のために使われる公的資金は対GDP比でたったの3・4パーセントなのだから驚く。OECD加盟国30カ国のなかで最低のレベルをひたすら歩み続けているのだ(平均は5パーセント)。また国際人権規約(1966年国連総会で採択・日本は1979年に加盟)の条項には「高等教育の段階的無償化」というものがあるが、それを承認していないのは条約加盟国157国中、日本・ルワンダ・マダガスカルの3カ国のみ、というありさまだ。(中略)政府は何のために教育をやっているのか、公的教育を施した人材を社会のためにどのように役立たせたいのか、ということにはほとんど触れない。だから気が付くと「高学歴ワーキングプア」などが大量発生していたりする。(216頁)。

昔、法曹養成は全額が国費でまかなわれていました。司法制度を支える人材が重要な役割を担っているという価値評価が存在していました。法科大学院を中核とする法曹養成制度の改変は司法試験受験生をマーケットに取り込みたい大学と法務省管轄であった法曹養成に権限を広めたい文科省と法曹教育に市場原理を取り入れたい財務省の利害一致にもとづく露骨な政策誘導だったのです。

医者

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