儲けとやりがいの調和
北村明子「だから演劇は面白い!」(小学館101新書)の記述。
「もうける」ことは、自分のやりたいことをやり続けていくための必要最低条件ではありますが私の目的はあくまで「やりたいことをやる」の1点に尽きます。黒字はそのための条件の一つにしか過ぎません。(略)従って、やりたくないことをやりながら黒字を出していくことへの関心が私にはありません。あくまで自分の欲望を具現化していきたい。そしてやりたいことをやり続けていくためには黒字であることは基本であり、やりたいことをやりながら食べられるシステムづくりが必要だったのです。もうけるのではなく黒字を出す。その方法を求め続けた結果、作り手主導で芸術性を重視し収支の見込みの甘いどんぶり勘定が多い演劇界の常識を打破しようと心がけたのです。いいものをつくればお金はあとからついてくるということを私は経験から学びました。この不安定な時代、どんなにもうけても、どこで破綻するかわかりません。ただただもうけて何が得られるのでしょう。そんなことよりも共に働くみんなが食べていけるだけの利潤が出ていい芝居をつくっていけるほうがはるかに幸せです。
弁護士にとって事務所のマネッジメントは大切な作業。やりたいことをやり続けていくためには黒字であることが前提です。現在の弁護士大量増員が真に問題なのは弁護士が正義を追求していく前提としての経済的安定が崩壊しつつあるからなのです。日本の税制では儲けても多額の税金を課されるだけですし、この不安定な時代に過大な投資をして業務拡大に走っても、どこで破綻するか判りません。瞬間的に儲けて何が得られるのでしょう?事務所で共に働くみんなが食べていけるだけの適正な利益を確保できる・適量の仕事を・息長く受任していけるほうがはるかに幸せです。