日本銀行の自負?
私は学生時代に経済学に興味を持ち「一般理論」も若干かじりました。株式投資を美人投票に喩えるケインズの書きぶりに感心して読んだ記憶があります。ケインズ経済学には厳しい批判がなされていました。価格の調整機能を重視する古典派の批判もありましたが、私がそれ以上に関心を寄せたのは政治過程分析にもとづく批判です。ジェームズ・ブキャナンとリチャード・ワーグナーの共著「赤字財政の政治経済学ケインズの政治的遺産」は政治的現実の面からケインズを批判しました。ケインズは金融政策より財政政策を重視・不況時に減税と積極財政を行い好況時に増税と緊縮財政を行う・政治家は人気取りのため不況時政策を官僚に行わせる圧力を産み出す・民主主義を看板とする国家ほど赤字財政を構造的に引き起こすことになる。
我が国の政治過程を見ていると上述の批判が見事に当てはまります。選挙目当ての利益誘導をする議員とその圧力を受けて赤字財政に向かう財務官僚という構図が出来上がっています。自民党(特に田中派)が確立したこの構図は今も生きています。膨大な赤字国債の累積はその帰結に他なりません。適切な財政政策のためには民意からの独立が必要です。他方で日銀法の改正(第23条・25条)により内閣からの独立性を獲得した(任命に国会の同意が必要・内閣に解任権がない)日本銀行が円高に悩む輸出企業を軽視してデフレを放置しているのも気になります。円高は輸入者(特に資源輸入者)には良いことですが輸出依存度が高い企業には打撃です。金利政策で効果がなければ量的にマネーサプライを増やす必要があるように素人としての私は感じるのですがプロ的には難しい判断なのでしょう。日本銀行には<資金需要がないところに資金供給してもしようがないじゃないか・円高は資源輸入国で投資国である日本にとってプラス面が大きいではないか・我々は世論に媚びずに的確な政策判断を行っている>というケインズ的自負があるのでしょうかね。