書記官と弁護士のサブテキスト交換
B 同じ法的言葉であっても弁護士によって受ける印象が違うということがあるのでしょうか?言い方1つで違った意味にとられるという局面もあるのでしょうか?
S 個人的な見解を申し上げると,弁護士が法的言葉を発した場合,多面的に検討します。その際,その弁護士のそれまでの裁判所や書記官に対する態度,こちらの反応に対する対応等を考慮した上で,最終的にこういう意味でおっしゃったのだろうと推測することになります。書記官も人間ですから以前の事件で「あんた,それでも書記官か」とか「あなた失礼な書記官でしたね」とか言われると当然可能だったとしても善意には解さないでしょうね。弁護士と書記官の関係といっても、専門分野での<対人関係>に過ぎませんから。
B 判ります。チェーホフという劇作家がいまして「テキスト」の下にある「サブテキスト」を重視した人です。弁護士と書記官との対応も、表面的なテキストの交換とともに感情を含んだサブテキストの交換が為されているのでしょうね。日頃悪意を含んだメッセージを発している人が困ったときだけ機嫌良く接しても、サブテキストとして何か勘ぐってしまいますよね。
S サブテキストという表現があるんですね。書記官の大半は膨大なサブテキストを持っていて大部分共有しているということになります。私は書記官=役者+マネージャー+御用聞き+セラピストだと思ってますので弁護士よりも書記官の方が役者が上というか、したたかだと思いますよ。
B なるほど。私は修習生の時に書記官の方と仲よくなり良く話を伺ったのですが、書記官は裁判官との関係でもサブテキストの交換をすることが多いようですね。
S 多いです。トップシークレット扱いのものが多いですけど(笑)。