久留米版徒然草 Vol.35

老いてジャンルを変えること

「100分で名著」ボーヴォワール「老い」(上野千鶴子)を読む。ボーヴォワールがこの本を書いた動機は現代社会で老人が人間として扱われていないことへの怒りである。変化の速い消費社会において老人は「廃品」として扱われている。上野さんが提示する高齢者の上手な生き方とは?

だいたい50代が業績や社会的地位のピークです。そこを過ぎると多くの人はとたんに自己模倣が始まります。乗り越える手立ては何か?「ジャンルを変えること」です。畑を変えたら人は必ずそこで初心者になります。

「ジャンルを変える」と言っても高齢者が未知の世界に入るのはハードルが高い。そこでレヴィ=ストロースが勧めるのは「ブリコラージュ」だ。既に知っていることを利用して新しいものに再利用する手法。高齢者に相応しい。岡敦氏は、レヴィ=ストロースが「野生の思考」で展開した「ブリコラージュ」の意義を次のように説明する(「強く生きるための古典」集英社新書)。

残骸のようにして経験が散らばっている。役に立たない半端な技術、使い道のない知識、断片的な感情。そんなカケラが無数に散らばった広大なゴミ捨て場に立っているようだ。もし、もう一度自分を「立派な人物」に作り上げようと思っても、とっくに手遅れだ。新たに素材を集め、選び、磨きあげる時間もなく、綿密な計画を立てる能力もないとわかっている。しかしブリコラージュなら?あの経験を生かし、この技術を流用して何かできるのではないか?あれも知っている、これも覚えている、組み合わせてみよう。自分ひとりでは無理なら同じように経験の残骸を抱えている人と力を合わせれば?ブリコラージュという方法を用いれば、ぼくもまた何度でも敗者復活戦を戦える気がする!レヴィ=ストロースにあっては、どんな経験も無駄ではなかった。苦労して身につけた技術や、時間をかけて仕入れた知識。それらは使うあてもなく、何年も何年も放置されていたけれど、無意味な待ち時間としか思えない月日の後、ブリコラージュによって、すべて再生されたのである。

FB友の田中教授  頭が老い始める?30代後半でこちらの世界にジャンルを変えたおいらは良かったかも知らんですね。ブリコラージュのために頭の中が「常にゴミ箱のような」意識を持って生きている必要があるような気がします。その自覚はあるんですけど案外と老いてからだと老眼と体力低下でしんどいかもしれません。「老い」は早めに認識したほうが良さそうです(´・ω・`)
私  同感です。私も自分の「老い」を早めに認識できて良かったです。

前の記事

気温の変化・明暗の変化

次の記事

無知との遭遇?