久留米版徒然草 Vol.194

自分の同一性って何?

北九州芸術劇場小ホールで演劇「新生物」を拝見(@飛ぶ劇場)。2024/12/8
 体重130キロもある大男…というか、だいぶ太った2人の男が主人公。この2人がフィットネスのジムで出会います。それぞれの事情でダイエットを志した2人ですが、簡単には痩せません。やがて高額なやせ薬に手を出そうとしたり、形成外科手術も視野に入れ始めます。自らのカラダを外側から変えていった先に「本当のわたし」とは何なのか?という問いが登場人物たちに芽生えます。誰もが持っているちょっとした変身願望の行き着く果ては…。

 ネット上に次の記事があった。
 この己の身体を劇的にリニューアルしたくなった”とコピーが付けられた本作は泊篤志が作演出を手がける新作。初日公演を終え泊は「今回はルッキズムにまつわる物語なので、ひどい台詞や状況が描かれるんですが、そこを観客の皆さんがドン引きしたり笑いながら観てくれている様子にホッとしました。どの登場人物に寄り添うかで見え方がぜんぜん変わって来るんだ、といった感想をもらって自分の汚い部分も含め、この舞台を生み出せて良かったなと思えました」と手応えを語った。

 私の感想。現代哲学の1つである現象学的な思惟では「主観か・客観か」の2分法は排斥される。注目されるのは身体。身体って主観なの?客観なの?デカルト的主観論では身体って客観に属する。では身体を取り換えたときに自分の同一性は保てるのか?顔を取り換えたら?脳は?(そもそも自分の同一性って何?)ルッキズムという言葉でくくれない大きなテーマを本作は投げかけていました。とは言え、そこは演劇です。痩せ薬だの、美容外科だの、ユーチューブの解説動画だの、今風のコトバをちりばめて観ている人を飽きさせない。さすがの舞台でした。

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