久留米版徒然草 Vol.211

独居老人日常生活

筒井康隆「敵」(新潮文庫)。独居老人日常生活の細かな描写が「私小説的な湿気」や「人生論的な凡庸」を排除している。が、最後まで読むと「あまりにも細かすぎる描写」こそ「老人は初めから既に現実から離れていたのかも?」という印象に変わる。この筒井ワールドを映画がどう描くのか?楽しみです。それにしても自分が「老人文学」に魅かれる年代になるとは何たること!

「酔生夢死」。本来は「詰まらぬ一生」という意味なのだが、儀助にとっては酔っぱらったままで生き酔っぱらったままで眠り、その夢の中に死ぬことが実に素晴らしいことと思えるのだ。実際出典を知るまで儀助はこれをまるで仙人のように浮世離れした脱俗の生涯を表現した言葉と認識していたのだった(「敵」213頁)。私も誤解していました。でも誤解のほうが良いかも?

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