歴史コラム(まち歩きの興隆)
最近、ちょっとした「まち歩きブーム」が起きています。先駆けとなったのは「長崎さるく博」の成功。これまでの博覧会が「はこもの」に重点を置きすぎ開催地に根付いてこなかった反省の上に立ち「まち自体を歩いて楽しもう」という画期的なアイデアは、それまでの「観光」に飽き飽きしていた多くの者の共感を呼び、大きな反響を呼びました。私も「長崎さるく博」の企画のいくつかに参加しました。印象深かったのは江戸末期に構築された台場(特に佐賀藩が嘉永6年に四郎ヶ島に設置した砲台)、幕府海軍伝習所跡と長崎造船所資料館、丸山花街、ド・ロ神父の布教跡(外海町)などです。さるく博の成功により「長崎さるく」は常設企画となりました。私は近々「憧れの上海航路」と題する講演に参加します。講師の岡林先生は「上海航路の時代」(長崎文献社)で存じ上げていましたが、先生のお話を直接聞ける企画をつくっていただけるとは感動です。
私の地元久留米市でも「久留米ほとめき街旅博覧会」が実施されます。久留米の郷土史には多少知識がありますが、こういう企画にはまっさらの心で参加します。詳しい地元の方に教えを請いながらまちを歩くのは楽しいものです。*宜しければホームページを覗いてみてください。
日本社会は現在を生き抜くことに必死でした。住んでいる土地への関心を持つゆとりがありませんでした。現在の生活を少し離れて見る余裕ができた今だからこそ過去を振り返る動きが活発になってきたのではないかと私は思います。まち歩きに参加する方の多くは中高年。人生の折り返し地点を過ぎ、これまでの道のりを振り返ることができる方々ばかりです。みなさん楽しそうに参加しておられます。講師の方々も熱心に聞き入る参加者の熱意を感じ楽しんで話をしてくださいます。まち歩きは先人が形成した歴史を味わい・その土地と自分を一体化する素敵な経験です。こういったまち歩きの機運が一過性のブームで終わることがないよう私は祈っています。