5者のコラム 「芸者」Vol.109

30秒の値段・30分の値段

Grapeに以下の記事が掲載されていました。

ある日ピカソがマーケットを歩いていると、1人の女性が彼を呼び止めました。「ピカソさん。私はあなたの大ファンなんです。この紙にちょっとした絵を描いていただけませんか」。ピカソは笑顔を浮かべ女性が差し出した紙に小さくも美しい絵を描きました。そして彼女にこう言ったのです。「この絵の値段は100万ドルです」。驚いた女性は「でもピカソさん。この小さな絵を描くのに、あなたは『たった30秒』しかかかっていないではありませんか」。ピカソは苦笑しながら「お嬢さん、それは違う。30年と30秒だ」。30秒の値段。ピカソにはその輝かしい才能もさることながら数十年積み上げてきた経験があります。この逸話には素晴らしい才能と経験を「たった30秒」と考えることへの問題提起が込められているのです。ピカソだけでなくアーティストやクリエイター、ミュージシャンなど時給では測れない才能や成果は時として世間に理解されないことがあります。

昔は「ちょっと話を聞いただけなのに」という口調で弁護士の30分5000円(別途消費税)の相談料を非難する方がいました。しかし、その「場」に来るまでに弁護士は膨大な時間とエネルギーを使っています。その「30分」には多数の文献を消化するとともに経験で裏付けられた弁護士の実践的法律知識が詰まっています。しかも(事件受任するのならともかく)相談だけで終わる事案の場合、事後のコントロールが出来ないのに、結果に対するリスクだけをとらさせる可能性すらあります(難儀なことです)。世間の方にとって法律相談は30分だけで終わる会話かもしれませんが弁護士にとって法律相談が「30分だけで終わる」とは限りません。